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Column 2009年「ケルン旅日記」

ケルン旅日記

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「民舞組曲」より「囃子」

今回は、この特別ブログならではの企画で、
ケルンで公演する「民舞組曲」から「囃子」の演奏をアップします!

この演奏は、2003年11月に公演した僕の作品展でもある
「和田薫の世界 喚起の時」のライヴ映像です。

「オーケストラのための民舞組曲」は、1987年僕がヨーロッパを放浪中に作曲したもので、ヨーロッパ各地を訪れながら、日本人として何を表現し、作曲家として何を書くべきなのかを思索する中完成しました。

ヨーロッパのそれぞれの国には、5万人位の中規模都市でもオーケストラが存在します。それは地域の生活に溶け込み、自分たちのホームであるホールで練習も本番もします。
マーラーを演奏するような大オーケストラではなく、二管編成の、所謂シューベトサイズと言う規模なのですが、そこには音楽を楽しむ演奏家と聴衆が、ホールと言うサロンの中で、実に豊に音楽を享受していました。

そういう派手ではない、日常的な音楽のあり方を見聞し、
こういうサイズの、日常的な作品を書きたいと思っての創作でした。

曲は、「囃子」「馬子唄」「踊り」「追分」「土俗的舞曲」の5つの小品からなる組曲ですが、今回アップした「囃子」は、前述した創作のコンセプトの発端でもありました。

・ コンパクトな編成
・ 笛と太鼓を中心とした楽想
・ 津軽の「あいや節」からのリズムモチーフ
・ 合いの手としての「声」の導入

等々、それまで僕が作曲してきた作品とは全く違った方向性なのでした。

ある意味、この作品から僕は「日本人」としての作曲家の立場を意識してきたと言っても過言ではありません。

それには、前述したヨーロッパでの見聞の影響もありますが、
もう一つ、当時、指揮者の広上淳一さんのところへ居候していた僕は、
ヨーロッパと日本の音楽の現状と、現代音楽のあり方、そして日本人が西洋音楽をやることの意味と意義を、毎晩のように酒を酌み交わしながら語り合っていたことも大きく影響しています。

それは、作曲家の立場、演奏家の立場と環境は違えど、その未来へ向かっての「覚悟」を生成するに最も必要な時間だったのかもしれません。

その中で生まれたのが「民舞組曲」です。
この作品は、語り合った中で得た結果とヨーロッパで散々お世話になったお礼の意味を込めて、広上さんへ献呈されています。

広上さんが、スウェーデンのレーベルBISでこの曲をレコーディングしてくれたのがきっかけとなり、Fechner氏がこの曲を知り、2002年バイエルン放送響で演奏して頂き、そして今回のケルン公演と繋がってきたのです。

作曲してから、もう22年。
友人の部屋を借りてオーケストレーションしたり、
後輩たちにパート譜作りを手伝って貰ったりしたのが、つい昨日のようです。

そうそう、もう一つエピソード。
この曲は、スウェーデンでの初演が決まっていたので、当初から英語のタイトル「Folkloric Dance Suite for orchestra」と決まっていたのですが、日本初演をする時にこれをどう訳そうか迷っていました。
そのことを師匠である伊福部昭先生に相談したところ、

「『Folkloric Dance』だから『民』と『舞』を合わせたら?」

と提案して頂きました。

つまり、和訳タイトル「民舞組曲」の名付け親は、伊福部先生なんです。

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