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現代音楽からTV・映画の劇伴や舞台・イベントなどの作曲や編曲etc.

Column コラム

喚起の時へ Vol.1 出発編

2004年06月09日|コラム

早いもので、去年の11月5日のコンサートから約8ヶ月が過ぎようとしています。 ようやくこの6月末には、そのライヴ盤CD&DVDがリリースされるのですが、今そのリリース準備を進めながら、この数年間の道程が走馬灯のように思い出されます。

今回は、メイキング・オブ・喚起の時–という感じで、皆様に舞台裏をご紹介し ていきたいと思います。

「オーケストラで個展コンサートをしたい」そう想ったのはいつの頃からでしょ うか。想いの原点を辿っていけば、それは作曲を始めたころまで遡るかもしれま せん。

作曲家は、画家や小説家と違い、楽譜を書いただけではその音楽の実態は見えません。もちろん自分の頭の中では、世界最高のオーケストラが演奏しているのですが、それを本物の演奏家を通じ、聴衆とともに共有するからこそ、音楽としての醍醐味があり、また作品として完成された形で継承されるのだと思います。そのためにも、いつか自分でコンサートを開きたいと10代の頃から想っていました。

考えてみれば、モーツァルトやベートーヴェンも宮廷の保護を受けられなくなって からは、すべて自主運営でコンサートを開いていたのです。今でこそ世界的な名曲として、日本では大晦日恒例の曲として定着している「第九」も、べートーヴェンの自主コンサートで初演されたのでした。公演後に自分で経費の計算をした走り書きが残っているそうです。

僕も、委嘱等で曲を依頼され、初演されることは年に数曲あるのですが、「自ら書きたいと思った曲を作曲し、発表する」 これが作曲家の原点ではないかと思うのです。

前置きが長くなりましたが、そんな想いを積み重ねて、2001年頃、つまり21世紀にの幕開けと共に個展コンサートの企画を練り始めました。

何故このタイミングだったのか。これには二つ理由がありました。一つは、約15年劇伴音楽の仕事をしてきたのですが、「犬夜叉」という僕にとって 重要な作品に出会い、それを直接聴衆の皆さんに聴いてもらいたいという気持ちです。 それまでも多くの作品に携わってきたのですが、「犬夜叉」は僕の純音楽のコン セプトを反映した劇伴でもありました。「日本の音の良さを喚起する」それがこの作品で現実化できたのでした。

放送が始まり、サントラが発売されてから多くのリスナーに「邦楽器が好きになりました」「伝統音楽とオーケストラはすごく合うんですね」等々のお便 りを頂いたり、「是非コンサートで聴きたい」などリクエストも多く頂きました。

そのお便りの数々が、僕の背中を大きく押してくれました。そしてもう一つは、“King of 津軽三味線”木下伸市さんとの出会いでした。コンサートのプログラムにも書いたのですが、最初は1997年、和太鼓の林英哲さんのアルバム制作に参加したの時でした。確実で安定感あるテクニック、パワーと魂が同居した音 群。まさに作曲家を刺激して止まない魅力的な演奏でした。

その後「新・題名の ない音 楽会」の林英哲さんの特集の時に、木下さんのオリジナル曲「海流」を和太鼓と 津軽三 味線そしてオーケストラの競演としてアレンジし、「これは行ける!」と確信したので した。
以前から邦楽器とオーケストラの協奏曲的なものを書きたいと思っていたので すが、何をソリストにしたら良いか迷っていました。80人からなるオーケストラに負けないソ ロ。これはもう木下さんしかいないな、と自分の中で勝手に決めていました。

こうしてコンサート開催に向けてモチベーションが高まっていき、さて現実的 な企画 を考えなくてはという段階で、まずはオーケストラとホールの選定から始まりました。オーケストラは、1995年の「天地人」から多くの仕事を重ねてきた日本フィルハーモニ ー交響楽団にお願いしました。やはり僕の曲を何度か演奏してもらっているオーケストラだと曲のツボを心得ていますし、実は「犬夜叉」の劇伴も日フィルの金管セク ションに参加してもらったりしていました。

ですから演奏者・事務局ともに友好な関係にあり、その縁もあってコンサートの共催もお願いしました。コンサートというのは、実にいろいろな仕事があるもので、企画・運営はもとより、会場との連絡、楽譜管理、チケットの作成と手配、プログラムなどの印刷まわり等々、とても小社だけでは賄いきれないところを助けてもらいました。

オーケストラが決まったら、次はホールの確保です。欧米では、ホールは楽器 といわ れるほど、その響きがとても重要視されています。特に僕の曲はウルサイ曲(?!) が多く、そんな中でも木管・金管・弦楽器・打楽器がバランス良く響くところが理想的で した。いくつか候補は上がったのですが、やはり僕もクリスマスコンサートで舞台に上がったことがあり、スタッフとのコミュニケーションが良いサントリーホールを押さえることにしました。

とは言え、サントリーホールと言えば国内外の有名演奏家が集う超人気のホールです。2年先の段階で11月は3日間しか空きが無く、日フィルとのスケジュールを調整し、何とか確保することが出来ました。

さぁ、次は音響・照明・映像関係のスタッフの調整ですが、これは長年仕事で 培ってきた人脈から最高のスタッフをお願いできました。みんな忙しい中、「個展コンサートやるの?是非手伝うよ! 」と快く引受けてくれました。こういう仲間がいるということは本当に嬉しいし、財産だなぁと思います。

さてさて、いろんなことを書いていくうちに原稿の文字数が…!これは3回ぐらいの連載にするしかないですね。(苦笑) では、次回「新作誕生秘話と壮絶リハーサル」をお楽しみに!!